さて新年度を迎え、新入社員、もしくは中途採用での新メンバーを迎えておられる事業所様も多いかと思います。いかがでしょうか?雇用契約書の取り交わしは済ませられましたでしょうか。曖昧なまま放置してしまうと後々トラブルの元になります。是非お忘れなく。

つきまして今回お伝えするのは雇用契約書の作成に当たり、外せないテーマ「契約期間」です。

 

労働基準法では、労働契約の最長期間を定めています。

労働契約期間の上限年数および労働契約期間に関するその他の定めをお伝えします。再度ご確認ください。

1.契約期間等(14条)

労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(一定のものについては5年)を超える期間について締結してはなりません。

5年の「一定のもの」とは、次の①②のいずれかに該当する労働契約です。

  • 高度の専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る)
  • 60歳以上の労働者との間に締結される労働契約

2.条文の趣旨

長期間の労働契約による人身拘束の弊害を排除するために3年(5年)に制限をしています。ですが、期間の定めのない労働契約は、いつでも労働者側から解約することができますので、最長期間の定めはありません(高年齢者雇用安定法8条・9条・10条の2により、定年を設ける場合は60歳以上とする必要があり、また、65歳までの雇用確保措置、70歳まで就業機会確保措置があります)。

なお、1年を超える労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除く)を締結した労働者(上記①②の労働者を除く)は、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後は、使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができます。

「一定の事業の完了に必要な期間を定める」労働契約とは、その事業が有期事業であることが客観的に明らかで、その事業の終期までの期間を定める契約のことで、例えると、建設関係の工期~4年間で完了する土木工事において4年間という契約が可能。

①の高度の専門的知識等とは、博士の学位を有する者、公認会計士・医師など12の資格を有する者、情報処理に関する試験合格者、特許発明者、一定の資格・経験のある者で年間見込賃金額が1,075万円以上であることが確実な者など、厚生労働大臣が定める基準に該当するものをいいます。契約期間の上限を5年とする労働契約を締結できるのは、これら高度の専門的知識を必要とする業務に就く場合に限りますので、その業務に就いていない場合の契約期間の上限は3年です。あまり身近に感じられないですが、一部の高度専門職で雇用契約にある方に当てはまります。

3.契約期間に関する定め

・求人の際には「契約期間」を書面等により明示しなければなりません(職安法5条の3)。

・「労働契約の期間」は、書面等による交付で明示する必要があります(労基法15条)。

・やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間において労働者を解雇することができません(労契法17条1項)。期間の定めがある場合、その期間の雇用に対し期待権もあるので、期間途中はトラブルの元になります。

・有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、契約期間を必要以上に細切れにしないよう配慮しなければなりません(労契法17条2項)。1か月や3か月の契約を繰り返すのは合理的な理由がない限り認められません。

・有期労働契約が更新され、通算5年を超えると無期転換権が発生します(労契法18条)。無期転換ルールは就業規則にも記載があるか確認が必要です。

 

雇用契約書でこの先を見据えて、もう一つこの4月から話題となっている「賃金のデジタル払い解禁」についてお伝えします。

とは申しましても具体事例が少ないので、現段階での情報から簡単にいうと、今現在は一般的となっている銀行口座等への振込みに加えて、厚生労働大臣が指定する資金移動業者(〇〇Payなど)の口座への賃金支払いが認められるようになりました。

現在は資金移動業者からの指定申請の受付けを開始したところなので、現実的に企業がデジタル払いによって賃金を支払えるようになるのは、もう少し先の数カ月後になる見込みのようです。

いち早く利用を考えている企業にとっては、必要な手続きや運用における留意事項を今のうちにしっかりと確認しておきたいところです。

 (労使協定の必要性)

デジタル払いを開始するにはまず、各事業場において、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)と労使協定を締結する必要があります。協定には、対象となる労働者の範囲や、賃金の範囲・金額、取扱い指定資金移動業者の範囲、デジタル払いの開始時期について記載が必要です。

(個別同意と選択の配慮)

労使協定の締結後は、使用者が個々の労働者にデジタル払いの特徴などを説明します。同意を得られた場合には、資金移動業者の口座への賃金支払いを開始できるようになります。

取り扱う指定資金移動業者については、1社に限定せず複数を用意するなど、労働者の便宜に十分配慮して定める必要があります。また、賃金支払いの選択肢として、銀行預貯金口座への振込みや証券総合口座への払込みも選択できるようにしなければなりません。

労働者の同意は、書面または電磁的記録による「同意書」を通じて得ます。同意書に記載するのは、デジタル払いを希望する賃金の範囲・金額や、労働者が指定する資金移動業者口座の口座番号(アカウントID)、支払い開始時期、デジタル払いの受入れ上限額を超過した場合の代替銀行口座番号などです。

労働者への説明と、同意の取得に当たっては、厚生労働省が用意している同意書の様式例→ https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001017091.pdf こちらを参考に。

様式例の裏面には、資金移動業者が破綻した場合の保証や、資金が不正に出金された場合の補償など、労働者が理解しておくべきデジタル払いの留意事項が記載されているため、

様式例の裏面を説明すれば、使用者は必要な説明を行ったことになると思われます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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